飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「……意外と魔性の女なのかもしれないな、千夏は」
口元を大きな手で隠しながら、櫂さんは訳の分からない事を言う。私みたいな世間知らずの引き籠りが何をどうしたら魔性の女になれるというの?
もちろん男女交際の経験すらない私が、経験豊富そうな櫂さんをどうかしようなんて考えたことだって無い。
「櫂さんに言われたくないです、私だって貴方がどれだけ魅力的な人で惹かれる女性が多いことくらい分かりますから」
櫂さんだってこの結婚が契約でなく恋愛だったならば、私なんかを相手には選ばなかったかもしれない。私が二階堂 萩の娘でなければ……
そんな風に後ろ向きな気持ちになっていると、顎に手を添えられ上を向かされる。
「……なんですか?」
「うん。余計な事ばかり言うこの口を、一度塞いであげた方が良いのかと思って」
そんなに余計な事は言ってないと思うのだけど、それを口にしてしまうと取り返しのつかない事になりそうでグッと堪えた。
笑顔のまま私に顔を近づけてくる櫂さんに焦り、一気に汗が吹き出しそうになる。ちょっと待って? 彼の言う口を塞ぐってもしかして……
いつの間にか櫂さんの片腕は私の腰をがっちりとホールドしていて、簡単には逃げられそうにない。せめて両手で彼の胸を押してみようとしてみるが、どんなに力を入れてもビクともしない。
櫂さんはずっと余裕の表情で私を見ているというのに。