【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
すっかりと弓香さんはいつも通りに戻っていた。 先ほどまでの空っぽな瞳ではない。
たかが25年生きた俺に彼女へ何かを言っても陳腐な言葉になってしまうのだと思う。 ぺこりと頭を下げて彼女の顔をジッと見つめると、勝手に口が開いた。
「さっきの話ですけど」
「さっきの話?」
「ええ、家族の話です。 僕は弓香さんの仕事は立派だと思いますし、尊敬もしています。
だからこそ……きちんと話し合わないといけないと思います。余計なお世話かもしれないけど、きちんと話をしないと相手に想いが伝わらない事も沢山あると思うから。
弓香さんが家族の話をしている時、すごく大切な物を話すような顔をしていました。 だからもう一度きちんと話して下さい。
別の道を選ぶ選択もあると思います…。本当に未来を変えたいと思うならばやり直せない事なんてないと思う…」
弓香さんは一瞬目を丸くして、直ぐに柔らかい笑みを浮かべた。
「生意気ばかり言ってごめんなさい……」
「いえ、あなたの言葉肝に銘じておきます。 ありがとね、相馬さん」
手を振りタクシー乗り場に向かう彼女の後姿を見送った。 確かに大切な物は失って初めて気が付くのだ。
そしてきちんと話をしないと相手に気持ちが伝わらずに、誤解を招く事になる。
そう、この時自分が言った言葉がのちに重く圧し掛かるのだ。 今日は弓香さんと仕事をするのだとレナに正直に伝えれば良かった。 彼女を心配させないようにと自分的に気遣ったつもりだったが、それが逆に彼女を傷つける事態になってしまうのだ。