花筏に沈む恋とぬいぐるみ
雅が2人から離れている時間を見つけては、花と凛は2人で話し合ったり、作業を進めていた。
雅にテディベアの作り方を指導してもらったり、店の説明も受けているようで凛は大変そうだった。花は自宅に帰り休むことも出来るので、凛が心配になった。けれど「凛が寝てくれるから俺は寝なくても平気なんだ」と言い、ほとんど起きているようだった。
そんな日々も長くは続かない。
あっという間に数日が過ぎてしまう。忙しい時こそ、時間の流れは早く感じてしまうものだ。
四十九日という貴重な時間を穏やかに過ごして欲しいと思いながらも、せわしなく生活をしていた。
けれど、雅は毎日が楽しいようで、いつも笑顔だった。
残り僅かだというのに、不安など全く見せる事がないのだ。
もう終わりを見据えているのだろうか。そんな風に思っていたが、それはどうやら違うようだった。
それがわかったのは、残り2日となった夜の事だった。
「俺は、まだこの世界に残るよ。成仏もまだしなくていい」
「………え」
食事をしながら、凛がそんな事を唐突に言い始めたのだ。
花と凛は唖然として思わず固まってしまう。
「今日、病院に行ってきたんだけど、どこにも異常は見られないみたいだったし、四十九日きっちりにしなくてもいいかなって。凛ちゃんのお父さんも過ぎていたけど大丈夫だっただろう?」
「で、でも凛さん、どうして急にそんな事を」
「2人共、俺のためにいろいろ調べてくれているんでしょ?俺に隠れてやってくれてみたいだったから。でも、そんな無理はしなくていいよ。凛に体は返したい。けど、2人に無理させるわけにはいかないし。だから、せめて時間は気にせずにやって欲しいんだ」