花筏に沈む恋とぬいぐるみ





 「仕事はどう?大変な事はない?」


 ケーキと紅茶で穏やかな時間を過ごしていると、凛が問いかけてくる。
 心配してくれていたようで、すぐに話題に出してくれる。1人が事件を起こすと、その家族までも疑われる。それはこの国ではよくある事だった。だから、凛は誰かに何か酷い事を言われたりされたしてないか、を心配しているのだろう。口には出さないが、クマ様は無言だったけれど先程から視線を感じる。
 そんな心配性の2人を安心させるために、花は笑顔で「楽しいよ」と即答した。すると、凛とクマ様の肩がストンと落ちたのを感じた。
 そんな彼らに花は、世話役になってくれた先輩が優しい事や、支店長が気にかけてくれる事、お客様に激励された事を話した。花が上機嫌で話をしたからだろうか。凛は「よかったね」と心から安心したように深い息と共に褒めてくれ、クマ様は「ヘマするなよ」いつもの憎まれ口で応援してくれる。
 彼ららしい言葉に、久しぶりに花浜匙に来ているのだな、と実感できて、花は「ヘマなんかしないよ」と返事をしながら隣に座っていたクマ様を抱きしめた。
 もちろん、「苦しい、離せッ!」とクマ様から怒りの言葉と柔らかいパンチを返された。



 
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