花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 こんな眠る間際に言うなんて卑怯だよ、と言いたかったか、体はとても眠かったようで瞼の重さには耐えられなかった。徹夜と精神的なストレスが過多に花を疲れさせていたのだろう。


 「おやすみ。ゆっくり休んで………」
 「………雅さん」


 まだ話していたいのに意識が遠のいていく。
 最後に見た雅の顔は、何故か泣きそうに瞳が揺れ、微笑みはなかった。



 それが気になったせいか、夢の中で雅と凛とでテディベアを作っていた。
 その時の姿は写真のままの青年の頃で、ワイワイと楽しかったのを花は起きた後もしばらく覚えていたが、雅が「おはよう」とご飯を準備して出迎えてくれると、それはシャボン玉のようにパチンッと弾けるように消えて忘れてしまったのだった。
 

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