花筏に沈む恋とぬいぐるみ
遠くから岡崎の声が聞こえた。話の内容から花が電話をかけてきたとわかったのだろう。冷泉は「いつでも戻ってきていいんだからね!」と激励の言葉を花に残した後に、岡崎と変わってくれた。
『乙瀬さん、お電話ありがとうございます。本社の方から電話したと聞きました。……大丈夫でしたか?』
「……はい、応援してくれる人がいるので。大丈夫です」
『そうですか……。それは、心強いですね』
もう弱音を吐こうとしない花の声を聞いて、岡崎は安堵の息と明るい声が電話口から聞こえた。
「岡崎店長。……私は、自分から辞めるしか道はないのでしょうか……?」
仕事を休むように上司に言われたのが1日前だが、しばらくという事は出社していいと言われるまでは何もできないという事を意味していた。そうなると、もちろん給料も入らない。
何も通達が来なければ、待機したままになるため、自分から辞めると伝えるしかなくなるのだ。それを待っているのだろうか、と思えてくる。
その花の考えは当たっていたようで、岡崎は表情を歪めたまますこしの間固まってしまった。
『………残念ですが、会社はそのつもりのようです。自分達から辞めて欲しいとは言えないため、自主退社にもっていきたいのでしょうね。……そのやり方を私は賛同出来ませんが』
「………そうですか。岡崎さん、one sinって副業的な事ってしていいんでしたよね?」
『え、えぇ……。個人のため、会社のためになるようなものでしたら大丈夫ですが………。乙瀬さん、まさか何か仕事が決まりそうなのですか?』