夜明けの光をあつめながら
私が走って家に帰ったら、『びしょ濡れになっていたおばあちゃんの姿』があった。
まるで『家を出て行きたい』と駄々をこねる、子供のようなおばあちゃん。

・・・・そして、同じようにびしょ濡れになったお母さんが、暴れるおばあちゃんを必死になって止めていた。
おばあちゃんを背後から抱きしめるように、お母さんは、おばあちゃんの動きを止めていた。

後からお母さんに話を聞くと、おばあちゃんは突然『仕事に行く』と言い出したようだ。
おばあちゃんは元理容師。
きっと『かつての職場』に行こうとしたみたい。

こんな雨の中、傘も差さずにね・・・。

ホント、その話を聞いた時は、意味がわからなかった。

と言うか、おばあちゃんの職場であった『理容室』は、おばあちゃんが職を離れたと同時に『店仕舞い』をしたらしいのに。

おばあちゃん自身が『膝が限界だ』って言って、自ら店を閉めたはずなのに・・・・。

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