極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
トントンとステップを踏むように中に入ったら、にこやかな笑みを浮かべた司会者に出迎えられた。
「藤倉さん、そろそろお時間ですよ」
「はい……」
今日のパーティーで美羽がカップルになる可能性は間違いなくゼロ。
それに、べつのパーティーに参加する手間や、カップルになってから結婚に漕ぎ着けるまでの時間を考えたら途方もない未来のような気がする。それに結婚できる確約もない。
(……本郷さんの話を聞いてみるだけでもいいかも)
今の美羽にとって、翔の提案は非常に魅力的だ。どうして彼が突然あんな話を持ちかけたのか、聞いてみる価値はある。
「申し訳ありません。参加を取り下げてもよろしいでしょうか」
「はい? 取り下げる? なにかこちらで不手際がありましたか?」
「いえ、そうじゃないんです。本当に申し訳ありません」
「……そうですか、それは残念ですね。またの機会をお待ちしております」
美羽が深く頭を下げたら、男性司会者はそれ以上引き留めなかった。