極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
美羽はゆっくりと口を開いた。
事の発端は、六歳離れている美羽の兄・大晴と恋人の電話にある。
『結婚はもう少し待ってほしい。妹をひとりにするわけにはいかないんだ』
たまたま通りがかったリビングから、兄の切実な声が漏れ聞こえてきたのは一週間前のことだった。
父親の仕事の都合で両親がアメリカのマサチューセッツに渡って三年、美羽は現在、大晴とふたりで暮らしている。
就職して四年目、誕生日がくれば二十六歳になる美羽は十分大人の部類。ところが大晴は、美羽を自分が守らなくてはならない存在と盲目的に考えているようで、なにかにつけて美羽の保護者になりたがる。
決してシスコンなわけではなく、きっかけは幼い頃の出来事にある。公園で拾ったガラスの破片で遊んでいた大晴は美羽の左腕を誤って切りつけ、七針縫うケガを負わせてしまったのだ。
彼はその一件をずっと引きずり、自分のせいで妹の体に大きな傷跡を残してしまったと責任を感じている。何年も前の話だというのに、未だに思い出しては『ごめんな』と謝るくらいに。