販売員だって恋します
「ゆ、指輪じゃないですか?!婚約指輪ですね!おめでとうございます!」

「うふふっ、ありがとう。由佳ちゃんには真っ先に知らせたくて。」

確かにここのところ、奏の綺麗さに磨きがかかっているような……とは由佳も思っていたけれど、まさか、まさか結婚しようと思っていたとは……!

しかし、奏はどちらかと言うと、性格的にはさっぱりし過ぎていて、……言うなれば色事にはちょっと鈍い。

どんな人がこの人を、恋愛モードにし、さらに結婚まで導いたのだろう?と少し疑問にはなる。

「お相手は……?」
「由佳ちゃんも知っているでしょう?一回ランチしたもんね。成田翔馬さんだよ。」

成田翔馬……確かに一度、一緒にランチを食べたことがある。
会社の社員食堂でのことだが。

確か成田翔馬と言えば、由佳と奏の勤めているデパートの創業者一族の御曹司、と聞いている。

彼を狙っていた女性は、あのデパートの中でも多数いたはずだ。
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