販売員だって恋します
もしかして、由佳もこんな気持ちになって、つい酔ってしまったのかもしれない、と思うと、微笑ましくて、笑ってしまう奏だ。

本当に宣言通り20分で姿を現した大藤はラフなシャツに、ジャケット姿だった。

「元宮さん……いえ、奏さんですね。」
「はい。」
少しだけ息を切らしているのは、相当に急いで来たからだと思われた。

「本当だ。由佳、寝てしまってるんですね。」
「そうなんです。」

「タクシーを2台、待たせてあります。1台、お使い下さい。お会計は済んでいますのでそのまま、どうぞ。」
「はい。」

大藤の奏に対する態度は、将来の翔馬の奥様、に対するものだった。

「由佳ちゃんは……。」
「俺が連れて行きます。由佳?起きれますか?」
柔らかい声で、そう話し掛け、そっと由佳に触れる。

奏からしたら、起こす気あるかな?と思うような優しさだ。
「んん?久信さん……?」

一瞬だけ目を覚ました由佳は、側にいた大藤にきゅうっと抱きつく。
< 141 / 267 >

この作品をシェア

pagetop