販売員だって恋します
苦笑した大藤は、奏に笑いかけた。
「抱いて行きますよ。」

「あ、じゃあ、お願いします。」
あまりにも2人の雰囲気が甘くて、そそくさとその場を後にする奏だ。

「奏さん……。」
「はい?」

「ありがとうございます。いろいろ……。翔馬さんのことも、由佳のことも……。」
翔馬は家族と上手くいっていなかったはずだが、奏は翔馬の自宅に一緒に挨拶に行ってくれた、と大藤は聞いた。

何よりも大事な成田家のことだ。
大藤の直属の上司であり、雇い主でもある成田勇は、とても喜んでいた。

「え?お礼を言われるようなことは何も!由佳ちゃんのこと、お願いします。」
「はい。」

そう返事をした大藤が、とても愛おしいものを見る目で由佳のことを見る。

さっき、最低と言われていたとか、本気にならないと言っていたとか聞いて、奏は一瞬不安になったけれど、これは心配することはないな、と思う。

「あ!大藤さん、由佳ちゃんの明日のシフト、遅番にしておきますので。」
「何時出勤なんです?」
「11時です。」
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