販売員だって恋します
そう言った、大藤の雰囲気が、一気に妖艶さを増した。
「あのオフホワイトのドレスはとても良かった。それで俺に大好き、って言ってくれたんですよね?」

ベッドがキシっと音を立てて、大藤が由佳の身体の横に手をつく。
ゆるりと微笑んで、由佳の手からコップを取り上げた。

「奏さん、いい上司ですね。今日は遅番でいいそうですよ。」
「え?!それって、奏先輩は……。」
「俺たちのことはご存知ってことですね。」

──ひょええええ……

一気に、血の気の引いたような顔をしている由佳の両頬を、大藤はその手で包み込む。

「バレたら困る?」
「困りません。でも、記憶があいまいなのが……私、大丈夫かしら。なんか、久信さんのこと、綺麗とか、ずっと前からいいって思っていたとかいろいろ言ってしまった覚えがあるんです!」
「ずっと前?」
目の前で、大藤が首を傾げる。

由佳は先ほどまで真っ青だったのが、嘘のように、ふわりと頬を赤くした。
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