販売員だって恋します
秘書とは言うけれど、それなりの実力を持った相手と認めざるを得ない。

それでも……本当に、本当に彼女が欲しい。
こんなにも強く願ったことはないし、こんなにも強く欲したことはない。

あの由佳の少しの照れたような笑顔も、柔らかい声もすらりとした身体も洗練された仕草も、どれもこれも。
魅力的で仕方ない。

大藤には『あなたには関係がない』と突っぱねられた。

その上すれ違いざまに、煽るように由佳のその時……を感じさせるようなことを言うから。

一瞬にして頭に血が上った。

ここ最近はそんなことはないのに、大藤に煽られたと分かっているのに、つい襟首に手をかけてしまった。

本当に腹立たしい。

はっきりさせよう。
由佳のことも、仕事のことも。

父から由佳へ『帰って来なさい。』と連絡があったのは、夜のことだった。

──相変わらず突然、と思うと由佳は少しだけ腹立たしく思う。
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