販売員だって恋します
少し強引ではあったかもしれないが、あの時は、事態を打開するためには、あれはきっと必要なことだった。

「由佳……?」
「あ、ごめんなさい。」
つい、そんなことを考えていると、横から大藤に覗き込まれる。

「何を飲みますか?絋さんは、オススメの発泡酒があると言って下さっていますが。」
「それにします。」

「じゃあそれと、つまめるものを適当にください。」
お任せでも大丈夫なことは以前に来て、大藤は分かっている。

「かしこまりました。じゃあ、板前に一任します。」

男前の寡黙な板前が「お通しです。」と大藤と由佳の前に小鉢を置いた。

見た目にも綺麗な野菜の盛り合わせに、鶏肉が添えられている。
嬉しそうな顔の由佳を見て、今度はふっ……と大藤の口元が緩んだ。

思わず、と言った感じで大藤の手が動いて、由佳の頭をそっと撫でる。

「んっ?なに?なんです?」
「いや、いい顔するなあと思いまして。」

由佳が微妙な顔をしているのを見て、大藤はグラスにお酒を注いだ。
2人で軽くグラスを触れ合わせてから、一口飲む。
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