販売員だって恋します
「私、かんざきあんじゅ」
猫のような目が印象的な、可愛らしい女の子だ。

「あんじゅちゃん……?」
「あん、ってみんなよぶの」

「あんちゃん、僕は大藤要だよ」
要はふわりと杏樹に笑ってみせる。
「要くん。ねえ、お花とか作れないの?」

「お花ならできる」
「きゅうりで?」

「そう、きゅうりで」
「あんに作ってくれる?」

「いいよ」
要は飾り切りで、杏樹に花を作った。
「すごいねえ……」

それはもちろん職人技には、はるかに及ばないものの、師匠である沢木としては褒めてやりたい出来だった。

「よく出来ましたね、要さん」
「杏樹ー!あん!」

「いけない!パパが呼んでる。要くん、ありがとう!」
台風のようにその子は去っていった。

彼女が何者かを知っている沢木は笑みが溢れた。
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