販売員だって恋します
楠田家にとって、男の子の7歳のお節句は特別なものらしい。

この日を境に、調理場への出入りを許されるのだそうだ。
合わせて、お客様へのお披露目をする。

その後は、お座敷へのご挨拶に出ることもできる。

もともと要は落ち着きのある子だったので、調理場をそっと覗きに来ていても、静かにそれを見ているような子だった。
けれど今日からは、父と共に中に入ることを許される。

朝の早い時間に神主さんが来て、すでに神事は終えていた。

意外なのだが、この辺りのしきたりは、女将である由佳がとても丁寧に取り仕切っていた。

現在の『くすだ』は以前とは違い、一見を断らない。

ネットでも予約できるようになった。
四季の素晴らしい料理はホームページに上げられ、誰でも見ることができる。

価格帯も安くはないけれど、家族で来れば、いちばんお手頃なコースでも10万円を超える、と言われていた頃よりはリーズナブルなものもある。

ランチならば、ご褒美として来られるような感じのお店だ。
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