販売員だって恋します
むしろ、やっとか……という雰囲気すらあって。
10年ほども前『くすだ』の存続の危機を何度も救ったのが、大藤だとみんな知ってはいたから。
そして今の盤石な安定的な経営を生み出しているのも、大藤だと察しているから。
「久信さん、要を見ませんでし……あら?」
大藤はしーと口元に指を当てて、要を指差す。
要は一生懸命、飾り切りを作っているところだった。
「要、時計の針が横に行くまでにできるか?」
大藤が聞くと、一瞬時計に目をやった要が、
「できます」
と答える。
45分という時計すら読めない子供に、淡々と厳しく接するその姿は、要を一人前として見ているからすることだ。
なるほどしっかりするわけだと、その場にいた調理人達が『要さん!頑張れ!』と心の中でエールを送ったものだ。
今日は、殊更に華やかな着物を着た由佳が、それを見てくすりと笑う。
「まるで、お兄さんを見ているようだわ」
「舌は間違いなく受け継いでいますね。不思議なことに、血も繋がっていないのに、沢木さんの腕も」
10年ほども前『くすだ』の存続の危機を何度も救ったのが、大藤だとみんな知ってはいたから。
そして今の盤石な安定的な経営を生み出しているのも、大藤だと察しているから。
「久信さん、要を見ませんでし……あら?」
大藤はしーと口元に指を当てて、要を指差す。
要は一生懸命、飾り切りを作っているところだった。
「要、時計の針が横に行くまでにできるか?」
大藤が聞くと、一瞬時計に目をやった要が、
「できます」
と答える。
45分という時計すら読めない子供に、淡々と厳しく接するその姿は、要を一人前として見ているからすることだ。
なるほどしっかりするわけだと、その場にいた調理人達が『要さん!頑張れ!』と心の中でエールを送ったものだ。
今日は、殊更に華やかな着物を着た由佳が、それを見てくすりと笑う。
「まるで、お兄さんを見ているようだわ」
「舌は間違いなく受け継いでいますね。不思議なことに、血も繋がっていないのに、沢木さんの腕も」