販売員だって恋します
もう、充分に伝わっているのに。

ふと、仕返ししたい気分になって、由佳も大藤の耳元で
「私も、愛してます」
と返すと、
「覚えていてくださいね」
と笑顔が返ってくる。

大藤は今日はスーツではなくて、和装だけれど、綺麗な姿勢と見とれそうなその仕草はもうずっと変わらない。

表には決して出ないけれど、いつも由佳を見守ってくれているのだ。
そして、何かあればいつでも由佳を守ろうとする。
どんな、手段を使っても。

敵に回したくない、と言われている人。
だからこそ、味方ならば果てしなく頼りになる人。
そして由佳の大好きな、大好きな人なのだ。

由佳はお客様のいるいちばん広い部屋に、仲居頭と向かいながら、久信さんの覚えていて下さいねって……。

怖いけれど、とても妖艶。
困るなあ……と満更でもないため息を零す。

「女将、お願いします。」
ふすまの入り口で、由佳は一呼吸した。

両手でさらりとふすまを開ける。

「本日はようこそいらっしゃいました。女将の大藤でございます」

そこに座っている人たちの期待にあふれた瞳を見て、ここにいて良かったと由佳は心から思った。

大事な家族と愛しい人と、ここを守っていく。



     ✽+†+✽―END―✽+†+✽



ここまで、読んでくださり、ありがとうございました(*^ω^*)


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