憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
それからしばらくジェイドに合わない日が続いた。
「今日も遅くなるみたいだね。ほら、近々慰霊祭があるじゃない?多分その警備の手配やら、国境線の方の残務もあるみたい」
そう言って、いつも通りの姿で、ワインを片手に寛ぐユーリ様は、「ねぇケーキ!アルマどれ食べたい?」なんて無邪気に笑う。
忙しくて顔を出す事はなくとも、ジェイドは週に1回の約束のモンシェールのケーキは律儀に用意してくれていて、テーブルの上には、この季節の新作だと言う桃のタルトと柑橘のジュレが用意されている。
どちらも、私とユーリ様の好きなものだ。
「うーん、迷いますね。ユーリ様お決まりなら先に選んでください」
「えー私も迷っちゃうから、アルマに決めてもらおうと思ったのにぃ~」
きゃぁきゃぁと2人で言いながらケーキを悩む。こうしていると本当に仲の良い女の子同士のやり取りと同じで、最近はそれが妙に楽しくなってしまっているのだ。
「じゃあ私は柑橘にします!」
「じゃぁ私は桃だね!ん~いぃ香り~今年も西部は気候も良くて豊作な上、出来もいいって聞いているから、きっとフルーツも美味しいものが入ってくるだろうね」
タルトに乗った桃に鼻を寄せて、満足そうにユーリ様は微笑む。
「そうですね。去年は長雨で野菜やフルーツも高騰していましたものね。今年はそんな事も無さそうで良かったですね。私は早くトラガルダ地域のマスカットが食べたいです」
悪戯めいた笑みを浮かべてジュレにスプーンを入れる。
ピンク色にオレンジ、イエローと色の違う柑橘のキラキラとした見た目が心を擽る。
「アルマは昔からマスカット好きだものね。もうひと月もすれば、初物が献上されてくるはずだから、すぐに王妃に届けさせよう」
同じように悪戯めいたユーリ様が畏ったように言うので、2人で顔を見合わせてクスクスと笑った。
「ところでさ、ジェイドとなんかあった?」
しばらく二人でご機嫌にケーキに舌鼓を打っていると不意にユーリ様に問われて、私は一瞬動きを止める。
「なぜです?」
引きつる顔をなんとか誤魔化しつつ、首を傾けると、それだけで付き合いの長いユーリ様には何かあった事がわかってしまったようだ。困った子だねぇと、ため息と共に穏やかに笑われた。
「ん~、いやなんとなくね。アルマもジェイドもどこか様子がおかしいなって」
ユーリ様の言葉に私は言葉を失う。流石と言うか、本当にこの人は、よく見ていると思う。
あの晩から私とジェイドが一緒になる事はなかった。だからジェイドと私、それぞれの様子を見て、彼女はそれに気づいたらしい。
敵わない。
はぁっと息を大きく吐いて、観念する。この数日モヤモヤと燻るこの感情を彼女に話せば何か糸口が見つかるだろうか?
カチャリとスプーンを置いて、私はユーリ様に向き直った。
王太后様に言われたことと、その晩に起こった出来事を簡単に話すと、ユーリ様は「なるほどねぇ」と大きなため息と共に、ワインをあおった。
「んーまぁ、結局のところ、あいつの意気地なしってだけだから気にしなくていいよ!アルマはよく頑張った!」
ユーリ様の長くてしなやかな手が伸びてきて、慰めるように私の髪を撫でる。
「でも…1年と言う期限が…」
「ん~確かにね~。それはあるんだけど…まぁそこはあいつの意地みたいなもんだからさぁ」
そう言って困ったようにユーリ様は笑う。
「きっと少しでも心を向けさせたいんだよ。義務じゃなくてさぁ。アルマはジェイドの事どう思ってる?」
こてんと首を傾げて見つめられて、私は怯む。だってそんなの…。
「どうって…よくわからないんです」
ジェイドは幼馴染で、ユーリ様の弟で、時々突っかかってくるちょっと腹の立つ…でも気楽な存在で…時々突然優しくて…男らしくて…何を考えているか分からない…。
うつむいてしまった私の頭を、ユーリ様がゆったりと柔らかく撫でる。
「まぁ、そうだろうね。じゃぁいつならいいんだって話だよ。はぁ、男心ってよくわからないよねぇ。」
そのどこかうんざりしたような言い方に、ちらりと視線を上げてみると、ユーリ様はどこか遠い目をしていた。
「ユーリ様?」
不思議に思って首を傾けると、彼女はハッと肩を揺らして目をしばたかせた。
「ごめん大丈夫だよ。とにかくジェイドの奴はしばらく放っておきな。自分で落としどころ見つけるまで待ってやって」
「酔っちゃったし、もう今日は寝ようかなぁ」と言ってユーリ様はゆったりと腰を浮かせて、立ち際にチュッと私の頬に軽く口付ける。
「お休みアルマ。あんまり深く考え込まないで?」
あまりにも滑らかで美しいその動作に目を奪われた私は、口付けられた頬を抑えたまま、その後ろ姿を呆然と見送った。
「今日も遅くなるみたいだね。ほら、近々慰霊祭があるじゃない?多分その警備の手配やら、国境線の方の残務もあるみたい」
そう言って、いつも通りの姿で、ワインを片手に寛ぐユーリ様は、「ねぇケーキ!アルマどれ食べたい?」なんて無邪気に笑う。
忙しくて顔を出す事はなくとも、ジェイドは週に1回の約束のモンシェールのケーキは律儀に用意してくれていて、テーブルの上には、この季節の新作だと言う桃のタルトと柑橘のジュレが用意されている。
どちらも、私とユーリ様の好きなものだ。
「うーん、迷いますね。ユーリ様お決まりなら先に選んでください」
「えー私も迷っちゃうから、アルマに決めてもらおうと思ったのにぃ~」
きゃぁきゃぁと2人で言いながらケーキを悩む。こうしていると本当に仲の良い女の子同士のやり取りと同じで、最近はそれが妙に楽しくなってしまっているのだ。
「じゃあ私は柑橘にします!」
「じゃぁ私は桃だね!ん~いぃ香り~今年も西部は気候も良くて豊作な上、出来もいいって聞いているから、きっとフルーツも美味しいものが入ってくるだろうね」
タルトに乗った桃に鼻を寄せて、満足そうにユーリ様は微笑む。
「そうですね。去年は長雨で野菜やフルーツも高騰していましたものね。今年はそんな事も無さそうで良かったですね。私は早くトラガルダ地域のマスカットが食べたいです」
悪戯めいた笑みを浮かべてジュレにスプーンを入れる。
ピンク色にオレンジ、イエローと色の違う柑橘のキラキラとした見た目が心を擽る。
「アルマは昔からマスカット好きだものね。もうひと月もすれば、初物が献上されてくるはずだから、すぐに王妃に届けさせよう」
同じように悪戯めいたユーリ様が畏ったように言うので、2人で顔を見合わせてクスクスと笑った。
「ところでさ、ジェイドとなんかあった?」
しばらく二人でご機嫌にケーキに舌鼓を打っていると不意にユーリ様に問われて、私は一瞬動きを止める。
「なぜです?」
引きつる顔をなんとか誤魔化しつつ、首を傾けると、それだけで付き合いの長いユーリ様には何かあった事がわかってしまったようだ。困った子だねぇと、ため息と共に穏やかに笑われた。
「ん~、いやなんとなくね。アルマもジェイドもどこか様子がおかしいなって」
ユーリ様の言葉に私は言葉を失う。流石と言うか、本当にこの人は、よく見ていると思う。
あの晩から私とジェイドが一緒になる事はなかった。だからジェイドと私、それぞれの様子を見て、彼女はそれに気づいたらしい。
敵わない。
はぁっと息を大きく吐いて、観念する。この数日モヤモヤと燻るこの感情を彼女に話せば何か糸口が見つかるだろうか?
カチャリとスプーンを置いて、私はユーリ様に向き直った。
王太后様に言われたことと、その晩に起こった出来事を簡単に話すと、ユーリ様は「なるほどねぇ」と大きなため息と共に、ワインをあおった。
「んーまぁ、結局のところ、あいつの意気地なしってだけだから気にしなくていいよ!アルマはよく頑張った!」
ユーリ様の長くてしなやかな手が伸びてきて、慰めるように私の髪を撫でる。
「でも…1年と言う期限が…」
「ん~確かにね~。それはあるんだけど…まぁそこはあいつの意地みたいなもんだからさぁ」
そう言って困ったようにユーリ様は笑う。
「きっと少しでも心を向けさせたいんだよ。義務じゃなくてさぁ。アルマはジェイドの事どう思ってる?」
こてんと首を傾げて見つめられて、私は怯む。だってそんなの…。
「どうって…よくわからないんです」
ジェイドは幼馴染で、ユーリ様の弟で、時々突っかかってくるちょっと腹の立つ…でも気楽な存在で…時々突然優しくて…男らしくて…何を考えているか分からない…。
うつむいてしまった私の頭を、ユーリ様がゆったりと柔らかく撫でる。
「まぁ、そうだろうね。じゃぁいつならいいんだって話だよ。はぁ、男心ってよくわからないよねぇ。」
そのどこかうんざりしたような言い方に、ちらりと視線を上げてみると、ユーリ様はどこか遠い目をしていた。
「ユーリ様?」
不思議に思って首を傾けると、彼女はハッと肩を揺らして目をしばたかせた。
「ごめん大丈夫だよ。とにかくジェイドの奴はしばらく放っておきな。自分で落としどころ見つけるまで待ってやって」
「酔っちゃったし、もう今日は寝ようかなぁ」と言ってユーリ様はゆったりと腰を浮かせて、立ち際にチュッと私の頬に軽く口付ける。
「お休みアルマ。あんまり深く考え込まないで?」
あまりにも滑らかで美しいその動作に目を奪われた私は、口付けられた頬を抑えたまま、その後ろ姿を呆然と見送った。