憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
とにかく、私は陛下とその腹心でもあるジフロードのあられもない光景を前に、身動きが取れなかった。
というより、頭の中が真っ白になってしまった。
だって、目の前に普段見ることのない男性の身体(しかも全裸)があって、そして二人がむつみあっていて、そして…。
入っ…入っているのだ。
こうした経験もなく、そんな光景など絵でしか見たことのない私の頭が処理できるわけもない。あまりのショックに涙があふれてきて、わなわなと震え始めた。
「わぁ~アルマ!ごめん!!」
そんな私の姿にユーリ様が慌てて身を起こし、ジフロードと離れようとする。
「ぬ!抜かないでください!!み、見えちゃいますぅううう!!」
そこで私は慌てて、ようやく…ようやく二人から目を背けることを思いついた。
だってこのまま見ていたら、ジフロードのモノまで見てしまうことになるのだ。
こんなショッキングな光景にさらにそんなものまで見せられたら、正気でいられる自身はない。
私の言葉にユーリ様がぴたりと動きを止めた。
私は、そのままじりじりと下がる。そうだ、早くこの部屋を出ればいいのだ!とにかく早くこの部屋から出たい!!
ギシギシと私に踏まれた衝立が壊れそうな音を立てるけれど、そんなことは構っていられない。
一目散に部屋の出口へ掛けた。そしてその戸口までやってきたところで、ドンと大きくて弾力のある硬いものにぶつかった。はずみで後ろに倒れかけた私の腕を、大きくて熱いものがぐっと掴んで引き上げて、再び弾力のある熱いものに体を押し付けられた。
「アルマどうしたんだ?」
驚きながら見上げれば、そこにはジェイドがいて、グリーンの瞳が驚いたように見開かれていた。私を見下ろした彼は、私がひどく動転している事に眉を寄せてグッと私の肩を強く抱くと、そのままユーリ様のお部屋に足を踏み入れた。
やめてぇええええええ戻りたくないぃいいいいいい!
絶対に見るものかと私は反射的にジェイドの胸に顔をうずめて目をつむる。
「っ…はぁ~、お前等っ…カギを閉めろ」
ジェイドの胸越しに、呆れた声を聴いて、私は身を固くする。どうやら彼も部屋の中で何が起こっていたのかを把握したらしい。
「ご、ごめーん。鍵かけたと思ったんだけどなぁ…おかしいなぁ」
「大変申し訳ございません」
ユーリ様の少し焦った、でも間の抜けた声と、ジフロードのひどく沈んだ声が聞こえて、ジェイドの大きなため息と共に、パタリと扉が閉じられる音がした。
「もう大丈夫だから、とりあえず落ち着け」
ぎゅうっと肩を抱くジェイドの手に力が込められて、背中をゆっくりと落ち着かせるように撫でられて、私はほっと息を吐いた。
そう、吐いたまではいい。そこで私は今度は、今の状況にうろたえることになる。
ぴたりと縋りつくように頬を付けているのは、間違いなくジェイドの硬くて筋肉質な胸の中で。彼の付けているわずかな香水の香りと、鍛錬の後の汗の香り…お…男の人の香り!そして脳裏にフラッシュバックするのは先ほどのユーリ様とジフロードの光景で。
「ひっ…ひやぁあ!!」
あろうことか私はジェイドを突き飛ばした。
「いてっ!」
突然私に突き飛ばされたジェイドは、わずかによろけて、後ろのソファに腰を打ち付けたようだ。
そして私はそこで正気に戻って、自分のしでかした事に気が付いた。
「ごごごごご…ごめぇん~!!」
半泣きになりながら謝るが、私の精神状態はもうぐちゃぐちゃだ。もうなんで涙が出ているかも分からなし、何にうろたえているのかも分からなくなっている。
そんな私をジェイドは困ったように見つめて…そして大きく息を吐いた。
「とにかく、落ち着け。茶を入れてやるから、そこに座れ」
後頭部をガシガシ掻きながら、私がいつも座るポジションを指さす。
「でもっ」
ジェイドにお茶を入れさせるなんてと、戸惑うと。
「いいから座れ!!」
そう強く言われて、私はすごすごとソファに腰かけた。
お茶を入れる間、ジェイドは何も話さなかったから、私はただただ呆然としながら彼の手際を眺めて、心を落ち着かせた。
そしてちょうどお茶が入った頃、ユーリ様の部屋の扉が開いて、身だしなみを整えた、気まずそうな顔のユーリ様と、今から死刑にでもなるのかと言うほどに顔色の悪いジフロードがやってきた。
「王妃陛下にかようなお見苦しい姿をお見せしてしまい大変申し訳ございません」
部屋に入ってくるなり、両膝をついて深々と頭を下げたのはジフロードだった。
彼は確か、ユーリ様が王位につく以前のお父様の代から政治の中枢に名を連ねており、政治家としては大変優秀だと聞いている。年齢はユーリ様よりも10ほど上のはずである。
確かに顔立ちもよく、貴族女性に人気も高い。特に王陛下とその腹心の宰相としてユーリ様と二人並んだ姿はたしかに良い目の保養だと自分も思った事がある。
それが…まさか…できていたなんて。
はぁ~っと一つ大きな息をつく。
「頭を上げて頂戴ジフロード。私も取り乱してしまってごめんなさいね」
そう言って、とにかく椅子に座るように手振りすると、彼はうつむいたまま腰を上げてユーリ様の隣のソファに腰かける。
そしてそこに、ジェイドが人数分のお茶を運んできた。
「だから俺は早めにお前たちの関係をアルマに話しておくべきだと言ったのに」
茶を置いて、私の隣に腰かけたジェイドが、呆れたように言う。どうやらこの二人の関係は、ある程度の所では公認らしい。
「うん、そうだね、ごめん…なんか不貞現場を見られちゃったような変な感じになっちゃってごめん」
そう言ってユーリ様は私に向きなおった。
「驚かせちゃってごめんねアルマ。きちんと説明するから、聞いてくれる?」