憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
手の中にある温かいものが、もぞりと動く感触で、私はぼんやりと覚醒した。
あれ?私どうしたのだろう、なんだか身体が痛い…。
そう考えてゆっくりと目を開けると、間近にあるエメラルドのような切れ長の瞳と目が合って…。
「おはよう」
そう言った彼の少し掠れた声に、慌てて飛び起きた。
そうだ!私、ジェイドについていて、そのまま!!
「お…はよう!目が覚めたのね!?大丈夫?気分悪くない?」
私の矢継ぎ早の質問に、彼はふっと表情を緩めた。
「大丈夫だ。大したことない」
そう言って、剣だこのできた少しざらつくジェイドの手が私の頬をゆったりと撫でた。
少々汗ばんでいるのは、きっと私の手の中にあったからだ。
「怖い思いさせたな、悪かった。」
何を言うのかと思えばそんなことで、私は首を振って彼の手に手を重ねる。
「びっくりしたけど、大丈夫。それより、守ってくれてありがとう。」
彼がこうなっているのも全ては、私を庇ったからなのだ。まず彼が目覚めたらすぐに言わねばならないと思っていた。
私の言葉に彼は少しだけ表情を歪めて首を振る。
「こうなったのは全て総指揮官の俺の責任だ。警護対象を守ることができたのは不幸中の幸いだが、まだまだ色々と見直さねばならんな」
そう言って、仕事を思い出したかのように身体を起こそうとするので、慌ててその身体を押しとどめる。
「部下の方たちがよく動いてくれているわ。犯人の洗い出しも目的も全て分かっているから、急ぐことはないわ」
「全てだと?あれから何日経っているんだ?」
怪訝な顔で聞く彼に私は肩を竦める。
「5日よ。調子をみて報告に上がるから、それまではあなたをしっかり休ませておいて下さいねってあなたの副官のジョナサン?に言われているの」
「っ…あいつ仮にも王妃に指示するなんて不敬な奴だな」
すまない、と詫びられて私はクスリと笑った。度々報告を上げてくれたジェイドの副官は、飄々とした男でユーリ様や王妃である私にも物怖じせず私達の警備も含め、ズケズケと言いたいことを言っていたが、彼の元から持っている性質なのか、どこか憎めず笑って許せてしまうところがあった。ただし、そんな彼がジェイドの副官で上手くいっているのか?というのは少々疑問ではあったのだが。
「面白い人よね?」
そう聞けば、ジェイドは深く息を吐く。
「あれでも随分有能なんだ…つかみどころはないし、品はないがな」
上司不在でも調査を進め、5日で成果を出しているのだからその有能さは私もユーリ様も実感している。そしてそんな組織を在職わずか数か月で作り上げているジェイドの力量にも。
「まだこの時間なら彼も司令部の執務室に残っていると思うから、一応目覚めたことくらいは連絡を入れてくるわね」
早く報告を聞きたいだろう。そう思って立ち上がろうとして、くいっと手を引かれて私は首を傾ける。
ジェイドの綺麗なグリーンの双眸が物憂げに私を見上げていた。
「他にも誰か呼ぶ?ユーリ様とか?」
私の問いに、ジェイドが少しだけ困ったように眉を下げる。
「いや、とりあえずジョナサンだけでいい。悪いな」
そう言って、今度はするりと彼の大きな手が離れた。
病み上がりで心細いのだろうか?彼にしては少々甘えたような行動に戸口へ向かいながら少しばかり私は頬が熱くなるのを感じた。
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