憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
「アースランがねぇ、読めないやつだと思っていたけれど。まさかそんな考えだったとはなぁ」
ユーリ様の感心するようなお言葉に、私は大きなため息を吐く。
「先王陛下も随分と驚かれていましたし、私も驚きました。寡黙でミステリアスな方だと思っていましたけど、何というか頭はいいのでしょうけど、どこかちゃらんぽらんな方でした。」
そう言って少しむくれてお茶を飲めば、ユーリ様はクスクスと笑って
「幼い頃から思ってはいたけど、多分俺たち兄弟の中で1番賢いのはアースランだと思うよ。まぁ、だからこそ。ああいう態度の彼を彼自身が作り上げたのかもしれないね」
どこか納得したように頷かれた。
「ただ、アースラン兄上の言っている事を全て信じていいのだろうか?」
私の隣で長い足を組んだ、ジェイドが眉を寄せる。
たしかにこちらにとって都合のいい話ではありすぎるのはどこか気持ち悪い気はする。
「意外と…素直に仰ったのかもしれませんよ?」
そこで言葉を発したのは意外にもいつも聞き役に回っているジフロードだった。
私達3人の視線が彼に集まると、彼は柔らかく笑って、パラパラと手元の資料をめくり出した。
「アースラン殿下がサマンサ様をお迎えになる時に一応彼女の身辺調査をしているのですが…彼女の実家は一応革新派に属する伯爵家ではあるものの、あまり力は強くありません。それどころか所属は名ばかりで、近年は領地経営に手一杯の状況です。革新派にしてみれば、王太子殿下の後ろ盾としては到底頼りにならない。まぁ公妃なら許せるところではあると言ったところですかね?
国王ともなると公妃もそれなりの役割も家柄も問われますが、しかし王弟という立場の王太子ならばそう煩く言わないでも…という感じなのかもしれません。サマンサ様と結婚が許されるから、チェルシー妃との結婚も了承したと仰っておられたとか?」
そう問われて私は頷く。
それにジフロードは
「それが全てかもしれませんね」と頷いた。
「おそらく革新派の連中は考えたのでしょう。彼の望むサマンサ様を公妃と認める代わりに、自分達の都合の良い家の者…つまりベルベルト侯爵家のチェルシー妃を王太子妃に娶る事を条件としてそれを飲ませた。
万が一ユーリ様に何か有れば一発逆転で国王になれるかもしれない王太子の妃には革新派派閥の妃が揃っている事になる。そうなれば自分たちに有利に働く事だってあり得ると。」
「おそらくそんな思惑はアースラン兄上ならば見破っていただろうな。しかし、サマンサ妃を側に置けるのならば、それくらいは飲んでもいいと思ったのだろうな。」
ジェイドが妙に納得したように頷いて、ユーリ様が「お前も気持ちは分かるものな!」と茶化すように笑った。
「そうだな!」とユーリ様の言葉を流すように投げやりに言ったジェイドだけれど…。
実は私が膝にかけた掛物の下で彼の大きくて温かい手が私の手を握っていて…繋ぐ力が少しばかり強くなったように感じた。
そんな事はおくびにも出さず、ジェイドは納得したように頷いた。
「だから自分は恵まれていると言われたのだろうな。たしかに俺たちの状況を知っていたのならそう思われるだろう。とにかくアースラン兄上のお考えが少しでも分かったのは大きいな」
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