憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?
その日の朝議を終えて、私は先王陛下と並んでゆっくりと王宮の回廊を歩く。
議題や懸案事項もさほど多くなく、このままいけば比較的落ち着いていて休暇を迎えられるという目処が立ってきた。
「このままユーリ様の復帰まで何とかなればいいね」と話しながら、中庭の一部に面した回廊に出たところで、剣撃の音が下の方から響いてくる。 
「おぉジェイドがやっているね、少し見ていこうか?」
少しだけ身を乗り出して回廊の下を覗いた先王陛下が嬉しそうに言うので、私も頷いて2人でテラスに出る。
ちょうどジェイドは執務の合間を縫って部下達と肩慣らし程度に手合わせをしているらしい。
普段着用している軍司令の上着を脱いで、シャツの襟元もくつろげた格好で、なんだか鍛錬というよりは、楽し気に打ち合っている様子だった。
「ジェイドが剣を扱っている所は久しぶりに見たけれど…なるほど随分と上達したなぁ」
私の隣では先王陛下が嬉しそうに感慨深げに呟いている。
たしかにジェイドの剣の腕前は、素人目に見ても見事なものではある。今までにも何度か王宮内で彼が剣を奮っている所を目撃していて、いつも見入ってしまうのだけど…。
今日の私の視線は、軽装になったジェイドの、その胸元に目が行ってしまう。
彼が動くたびにチラリチラリと覗く胸元には昨日私がつけたささやかな鬱血痕があるはずで…どうしてもそれが気になってドキドキしながら見てしまうのだ。
そんな私はどうやら知らない内に顔が赤くなってしまっていたらしくて…。
「アルマ、大丈夫か?少し日にあたりすぎたかな?」
顔をのぞいてきた先王陛下に指摘されてしまった。
「っ…そのようです」
あわててテラスから身を引いて、顔を両手で覆う。こんなところでジェイドを見てこんな反応をしているのはまずい。
慌てて回廊に戻って、先王陛下と2人で階段を上がっていく。
「まぁ、2人が上手くいっているようで私はうれしいよ」
リビングルームに戻り、アイシャが入れてくれたお茶を飲んで少し休憩をしていると、ようやく落ち着いた私に向かって先王陛下がニコリと笑ってそう宣った。
先王陛下まで!?もうやだ…この人達。
思わず顔を覆いたくなった。


その日ジェイドは午後から視察の予定で帰りが遅くなるとは聞いていた。
もしかしたら寝る前に少しくらい顔を出すかと思いながらも、結局その晩は顔を合わせる事は無く、知らない内に眠りについていた。
そうして朝方、ふと目が覚めて、なんとなく彼の残り香をかいだ気がして、辺りを見回す。
ぼんやりとした視界の中、彼がいつも飲んでいるお酒のグラスがベッドサイドの丸テーブルに置かれているのを見とめて、何故かとても温かい気持ちになって、そのまま眠りに引き込まれた。
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