憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?

そうして医師がやってきてユーリ様のお産が本格的に始まった。
寝巻きではなんだと、一度自室に着替えのためにリビングルームを通ると
そこには既にジェイドと先王陛下ご夫妻がいらして、全員が全員落ち着かない様子で、立ち歩いたり新聞を閉じたり開いたりしていた。
なんとか着替えを済ませて、簡単にユーリ様の様子をお伝えして解放されると、私はそのままユーリ様のお部屋に戻った。
そしてそこからまる半日、汗を拭いたり腰を押したり摩ったり、お水を飲ませたり…侍女達に混ざって働いた。
王妃だとかそんな肩書きはどうでもよくて。ただユーリ様を少しでも楽にさせてあげたい…その一心だった。
そうして、私や侍女たちや医師、もちろんご本人であるユーリ様が待ち侘びた産声を聞くことができたのは、正午を超えた頃だった。
甲高い大きな鳴き声が、部屋中に響いて、わっと皆が沸いた。
「誠におめでとうございます。王女殿下でございます」
医師の言葉に、息も絶え絶えになりながらも、ユーリ様が「女の子か」と小さく呟いて微笑まれた。
すぐに医師により処置をされた赤子は、侍女達により清められていく。
「おめでとうございます。お疲れ様でした」
額に浮いた大粒の汗を拭ってやりながら、そう声を掛ければ、うんうんと頷いたユーリ様は
「まさか私が、本当に子供を産めるなんて」
そう言って、言葉を詰まらせると、一筋涙を流された。
その言葉と涙には、きっと彼女がずっと背負ってきた苦しみや辛さや、もどかしさや、絶望感。さまざまなものが混ざって流がれていて、やはりあの時、産むことを勧めて良かったのだと、私まで涙が滲んだ。
侍女達により清められた赤子は、王室伝統の職人に織らせた真っ白なおくるみに包まれて、ユーリ様の手元へやってきた。
元気に泣く我が子を胸に抱いたユーリ様はその小さな頬をチョンチョンと突くと
「会いたかったよ、初めまして私の姫君」
そう言って、とても柔らかく微笑まれた。
その姿はとても神々しくて、幼い頃からずっと彼女を見てきた中で一番素敵で、輝いているように見えた。
ユーリ様の一通りの処置が終わった頃、ようやく入室の許可が出たジフロードが、急ぎすぎて転びそうなほどの速さで駆けてきた。
今はこの時間だけは親子で過ごさせてあげたい。
そう判断した私は、静かにユーリ様の隣を離れるとリビングルームに戻った。
「ご苦労だったな!」
そこに残っていたのはジェイドだけで、どうやら先王陛下ご夫妻は、議会や国民への発表に向けた文書の作成や報告の手配に回ってくれているらしい。
本来ならば、父である国王の仕事だけど、当のユーリ様は出産を終えられたばかりで、表向きは足を怪我されて療養中である事から、前もってその役割をお願いしていた。
「ありがとう。素敵な経験だったわ」
そう言ってジェイドの隣に座ると、彼が手ずからお茶を入れてくれる。
お茶を飲んでホッと一息つけば、急にドッと疲れが押し寄せてきて、大きく息を吐くと、彼の肩に寄りかかる。
いつか自分もこの人の子供を産む事になるのだ。正直怖い気持ちもあったけれど…今は幸せな印象が強くなった。
いつか今日のユーリ様みたいに私も我が子の産声を聞いて、あんな風に笑う事ができるのだろうか…なんだか少しだけそれが待ち遠しくなってきた。
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