涙の涸れる日
離婚

心の傷

 実家に帰って来た。
 結婚前と変わらない部屋。母が掃除をしてくれていたのが良く分かる。埃ひとつない。

 マンションに置いてきた私の荷物も、兄が一緒に運んでくれた。

 この部屋にボーッと居ると、二年前に戻ったような気がする。
 
 結婚してたなんて、まるで嘘だったみたいに……。

 この二年間まるごと記憶が無くなれば良いのにと思う。

 幸せだったのに……。
 何一つ疑った事すら無かったのに……。

 浮気されてたんだ……。
 半年も前から……。


 ゴールデンウィークの出張も嘘だったのかもしれない……。
 あの女の人と旅行してたのかも……。


 私との沖縄行きをキャンセルしてまで、その人と居たかったんだ……。


 あんなに嘘が上手につける人だったなんて知らなかった。

 私が鈍いのかな?
  
 私には女としての魅力がなかったんだ。

 
 それなら浮気なんてしないで、ハッキリ言ってくれたら良かったのに……。

 別れようって……。

 紗耶を好きじゃなくなったって……。

 他に好きな人が出来たって……。


 それで納得出来たかどうかは分からないけれど……。

 
 聞きたくなかったな……。

 他の人を名前で呼ぶ声なんて……。


 また涙が零れた……。

 あれから涙腺は壊れっぱなしだ。


 忘れたい。何もかも全部忘れてしまいたい。


 記憶喪失って、どうしたらなれるのかな?

 バカだな私。

 浮気されてる事にも気付かないバカだから捨てられたのか……。


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