涙の涸れる日
 交際は順調に進んでいた。

 紗耶が初めて俺の部屋に来てから二か月。
 八月になっていた。

 八月三十日は紗耶の二十四歳のバースデー。
 
 その日に合わせてプロポーズしようと、紗耶に似合いそうな可愛い婚約指輪も用意した。

 早目の夕食を紗耶のお気に入りのイタリアンの店で美味しく味わった。

「紗耶。誕生日おめでとう」

「ありがとう。佑真」

 美味しいワインで乾杯する。
 
 誕生日のケーキを前もって頼んでおいた。
 食事が済んだ頃、パティシエがワゴンで可愛くデコレーションされたケーキを運んで来てくれる。

 紗耶は喜んでくれた。

「大切な紗耶の誕生日だから」



 食事を終えて部屋に連れて来た。

 本当はホテルのレストランを予約して、上に部屋も取って……。
 なんてシチュエーションも考えたが……。

 実家暮らしの紗耶は、厳格な父親とお兄さんが居て泊まりなんてとんでもない。

 だから俺の部屋でプロポーズしようと決めていた。

「おじゃまします」
前にも来てるのに律儀な紗耶。

「紗耶。ここに座って」

「えっ? うん」
どうしたの? って顔をしてる。

 俺は紗耶の前に跪いて
「紗耶。俺と結婚してください」
指輪のケースを差し出す……。

「えっ? これって……」

「開けて見て」

ケースを開けた紗耶が涙ぐんでいる。
「素敵……。佑真、ありがとう……」

 紗耶の隣に座ってケースから指輪を出して紗耶の左手の薬指に嵌めた。

「綺麗……」
まだ泣いてる……。

 そんな紗耶が可愛くて愛しくて……。
「紗耶、愛してる」
 唇にキスをした……。

 紗耶もそれに応えてくれる……。


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