涙の涸れる日

新婚

 オランダから帰って新しい生活が始まった。
 マンションでの二人の毎日が始まる。

「佑真、朝ごはんは何を作れば良いの?」

「朝は食べないんだ。コーヒーだけで良い」

「えっ? 食べないの? でも旅行の時は食べてたよね?」

「旅行の時くらいかな? ゆったりした気分で朝食を摂るのは」

「そうなの……」

「うん。紗耶は好きな物を食べてくれれば良いよ」

「でも、体に良くないよ。ちゃんと食べないと……」

「もうずっとそうだから。俺の朝食は気にしなくて良いよ」

「えっと、コーヒーはコーヒーメーカーで入れれば良いの?」

「うん。ややアメリカンでね」

「分かった」

 昨夜遅い便で帰って来たから、佑真はきょう迄、お休みをもらってる。

 旅行の荷物を片付けて、二人で近くのスーパーへ買い物に行く。

 カートを佑真が押してくれて私は必要な物をカートに入れていく。

「今夜は何が食べたい?」

「そうだな。純和食が食べたいかな」

「だよね。私も」

「きょうは紗耶も疲れているだろ? 簡単な物で良いよ」

「簡単な物ねぇ」
ベテラン主婦じゃないから、簡単な物と言われても、何が簡単な物なのかも良く分からない。

 お母さんにもっと料理を習っておくべきだったと後悔してる。
 でも今時、何とかなるでしょ。
 スマホで検索すれば、どんなメニューでも無料でレシピが見られる。現代に生まれて良かった。

 お惣菜のコーナーに美味しそうなお寿司が並んでいる。

「紗耶。今夜は寿司にするか? 何もしなくても食べられるよ」

「お寿司、良いね。そう言えば食べたかったんだ」

「じゃあ決まり。どれにする?」

「うーんとね。サーモンが美味しそう。マグロも食べたいかな?」

「美味そうだ」

「ねぇ。佑真はお寿司ならどれ位の量、食べられるの?」

「そうだな。二人前はいけるかな?」

「だよね。じゃああとは、このにぎり一人前で足りるかな?」

「大丈夫じゃないか?」

「後はパン屋さんでパンを買って……」

「朝はパンなんだ」

「ご飯でも良いけど一人前作るのは不経済だから」

「そうか」

「明日の夜は何が食べたい? 序に買い物済ませようと思って」

「そうだな。紗耶が作る物なら何でも美味そうだ」

「分からないわよ。失敗しても怒らないでよ?」

「そんな事で怒ったりしないよ」
佑真は笑っていた。


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