男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 私は不調を表に出さぬよう細心の注意を払っており、それを言い当てられた驚きは大きかった。
「いえ、決してそんなことはありません!」
 全力で否定する私に彼は頷いて答えたが、本当に納得しているのかはわからなかった。
「……ならばいい」
 サイラス様はひと度寝台を出れば、情熱的な夜の姿が嘘のように素っ気なく口数も少ない。今も、そうだ。
 しかし、その眼差しが以前より柔らかになったように感じるのは果たして私の気のせいなのか……。
「温かい内に食え」
 サイラス様はそう言って手ずからパンを取ると、私の皿に置いた。
「すみません。ありがとうございます、いただきます」
 サイラス様は私と寝台を分け合って眠るようになってじきに、朝の食堂には足を向けなくなった。早朝に政務がある日を除き、簡単に摘まめる軽食を二人分部屋に運ばせて私と食べるのを日課にしていた。
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