男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 あの時、セリーヌはその背にふたつ下の弟・セリウスを庇って必死に詫びていた。地面にひれ伏したことで月光を集めたような長い髪の毛先は砂上に落ち、露わになった真っ白な項にふたつ並んだ小さな黒子までが見て取れた。背中を丸め、額を地面に擦り付ける彼女の姿はどこか背徳的で、俺の支配欲や所有欲といったものを疼かせた。
 ……この美しい少女を、俺だけのものにしたい。他の何人の目にも晒さぬように閉じ込め、俺だけに甘やかに微笑んで欲しい。
 こんなどす黒い欲望が胸に湧きあがったことに俺自身当惑は隠せなかった。同時に、これまで女はもとより他人に執着したことなどなかったから、俺はこんな感情も抱けるのかと新鮮な驚きも覚えていた。
 そうして俺への敵愾心を隠そうともしないセリウスにも、常にない好奇を刺激されていた。姉弟は顔の造作だけを見れば瓜二つだが性格は対極のようで、セリウスは終始ひれ伏すセリーヌの後ろから憤りを隠そうともせず俺を睨みつけてきた。
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