男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 思い至ったのは姉弟の入れ替わりという、あまりにも突拍子もない可能性だった。理性の部分で、馬鹿馬鹿しい、あり得ないことだ、と思うのにどうしてもこの考えを一蹴できない。
 空唾をのみ、一歩、また一歩と前に長靴を踏み出す。段々と距離が縮まってゆき、血の巡る音が常ならざる大きさで鼓膜に響いていた。
 その時、四年前の記憶の一片がふいに脳裏を過ぎる。……そうだ! セリーヌの項にはふたつ並んだ黒子があったはず。
 思い至った俺は、眩い金の頭頂に一歩分の距離を残して立ち、上着の襟から覗く日焼けを知らぬ真っ白な項に目を凝らす。
 ……どうか、俺の勘違いであってくれ。かつてない痺れるような緊張とジンジンと身の内が焼かれるような焦燥を自覚していた。
 ところが髪紐の結び目と重なって、ちょうど黒子のあったあたりが見にくい。なんとか角度を変えて注視すれば――。
 ……クソッ!! 小さなふたつの黒子を認めた瞬間、カッと全身の体温が上がり、頭の中では激しく火花が散る。
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