愛して欲しいなんて言わない!
車がホテルに到着して
私は車から降りた

ガラスに移る私の姿が
まるで別人のようだ

茶髪の髪が、カツラで黒髪になっているし
普段は着ない赤い色の派手な着物が
きらきらと輝いている

化粧も薄化粧だ

清楚で可憐な女の子ってイメージで
仕上げたんだろうけど

私は
清楚でも
可憐でもない

小西理菜って女は
不器用で
大雑把で
短気で
手が早い乱暴者だ

ガラスに映っている私は偽物だ

偽物の自分を睨んでから
私はホテル内に足を踏み入れた

一足先に到着していた
両親が笑顔で

三人の人間と話をしていた

ロビーの椅子で
くつろいでいた母親が私に気づく

父親の肩を優しく叩いて
私が到着した旨を母親が知らせた



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