愛して欲しいなんて言わない！

私の計画はここから始まる

まず奴らの前を通り過ぎて、
別の椅子に座って
煙草を吸う

それが最初のミッションだ

両親が私を手まねきした

その横を私が知らないふりをして
通り過ぎた

紹介しようと父が出した手に
わざと体をぶつけて
追い越すと

少し離れた場所に座った

袖の中に
しまっておいた
真新しい煙草を取り出すと

１００円ライターで火をつけた

「君、高校生でしょ？」

長身の男が
私の煙草を取り上げた

まだ口にしていない煙草は
私の手から
長身の男へと移動していく

男はにこっとほほ笑んでから
私の煙草を吸った

何？
なんなの？

私の計画の邪魔をしないでよ！

「も…申し訳ありません！
西九条様に、娘の醜態を…」

父親が長身の男に近づくと
頭を深くさげた

「べつに」

男は煙草をくわえたまま、ロビーを出て行った

私は男が去っていく背中を呆然と
眺めた

「申し訳ありませんね
うちの息子は手のかかるヤツでして」

今度はさっきの男の父親である男が
頭をさげた

でもどことなく偉そうだ