愛して欲しいなんて言わない!
「いつ頃、帰ればいいと思う?」

私はいつもの通り
優衣の店に来ていた

行く場所がないから
優衣の店に来てしまう

カウンターでコーヒーの匂いを
嗅ぎながら
ダラダラと土曜日の午後を過ごす

「電話してみれば?」

優衣が洗い物を片付けながら
口を開いた

「嫌だよ
最中だったらどうするのさ」

「最中って?」

「だから…
エッチの」

「恋人同士じゃないって
西九条さんが言ってたんでしょ?」

「でも学校で
エッチをしてた奴らだし」

私が顔をあげると
優衣の旦那が
私にモップを渡してきた

「なに?」

「掃除する?」

「は?」

「体を動かしていれば
時間は早く過ぎる」

優衣の旦那が
カウンターの中に入って行った

私はモップを持ったまま
呆然と
優衣の旦那を見つめた

勘違いしてるのか?
私が
西九条と青山のことで
ヤキモキしているとでも思ったのか?

違う
ただ家でダラダラくつろぐ時間が
欲しいだけだ

家?

あそこは私の家

西九条の家?

いつの間には
私の居場所になっている

西九条のマンションが
私の家になってる?
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