愛して欲しいなんて言わない!
「西九条先生って
本当に良い先生よね」

教室に青山が入ってきた
薄化粧でスーツのボタンは
大きな胸ではじけそうになっていた

「そうですね」

私は感情のない声で
返事をした

オレンジ色に染まっている空を
見つめ続け

できるだけ
青山とは目線を合わせないようにした

「西九条先生から聞いたわ
一緒に暮らしているって

家出中じゃないのね?」

西九条はどこまで
話しをしているのだろう?

「帰る場所を失った
生徒への配慮じゃないですか?

本当に帰る家が
私にはないですから」

「ふ~ん
それで担任の家に転がりこむって
どういう了見をしているのかしら」

「友人がいない若者は多いですから

温かい部屋と
布団を提供してくれそうな人を
考えたら、担任しかいなかったんです」

「嘘を言うのはやめて!
隼夜を好きなんでしょ?」

私は青山を見た
目を吊り上げて
私を睨んでいる

好きって何?
好きじゃないと西九条の世話になっちゃ
いけないわけ?

何も知らないくせに
私がどういう状況で
西九条の世話になっているか
知らないのに

…て私も青山の気持ちは知らない
西九条とどんな関係なのかも
知らない

お互い様か

「私が好きだと
認めれば、話は先に進みますか?」

青山の顔が
醜く歪む

「私を馬鹿にしているの?」
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