愛して欲しいなんて言わない!
「理菜を誘う口実だ」

「誘う?」

「そうだ
小林は理菜に気があるんだろ
一緒にいる口実欲しさに
妹がいると嘘をついた

次はお礼をすると言われただろ?」

そう言えば
そんなメールがあった

西九条と喧嘩をしたから
すっかり忘れてた

私は起き上がると
ベッドから足を出した

「どこに行く?」

西九条の温かい手が
私の腕を掴んだ

「小林に返事をするのを忘れてたから」

西九条の手に力が入った
ぐいっと私の腕を引っ張ると
私はバランスを崩して
ベッドの上に倒れた

「どんなメールだ?」

「西九条が言ったのと一緒だよ
お礼をしたいって…」

「そんなメールに返事をする必要はない」

「どうして?」

「期待を持たせるような行動はするな」

「期待?
何の期待?」

「まだわかってないのか?」

ため息交じりで西九条が言葉を吐き出した

「小林はお前を好きなんだ!
お前と一緒に過ごしたいから、嘘をついた
何でもいいからきっかけが欲しいんだ
あいつに隙を与えるな
付き合う気がないなら…いや、付き合うな
浮気は絶対に許さない」

西九条は私を抱きよせた
痛いくらい強く抱きしめてくる

「…わかったよ」

私の言葉に安心したのか
西九条は私の耳たぶにキスをした

短くて、唇がそっと触れただけだったけど
西九条が触れた耳たぶが燃えだすかのように
熱を発した

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