幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 前世では小さな会社のOLだったが、会社の研修等で多数の人の前に出て、司会進行を務める役を押し付けられたこともあった。社内に親しい人もいない前世のリーゼロッテ――佳奈――には、そういった役を押し付けやすかったのかもしれない。
 佳奈自身、それがわかっていても、自分から強く嫌だと主張することはなかった。
 自分が押し付けられた仕事を引き受けていれば、社内が円滑にまとまるということも知っていたから。
 あの頃、いやいやでも人の前に出ておいたのが今になって役に立つというのもなんだか不思議な話ではある。前世の記憶があってよかったと思うのは、こういう時だ。

(普通は、フランみたいな反応をするものなんだけどな。お父様は、そのことは知らないみたい)

 父の期待が、リーゼロッテに傾いているのを、リーゼロッテだけではなくフランチェスカも五歳児なりになんとなく理解しているようだ。

「公爵夫人のスキルを受け継いだのだとしても、きっと素晴らしい成果をあげるでしょうね」
「……わたくしのスキルは、たいしたことはありませんのよ。家族の健康を守る程度のことしかできませんもの」

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