幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 空になったグラスを真剣な顔でにらみつけながら、ぼそりとサージは言った。

「割といいところのお嬢様なんだよ、本当は。けど、リーゼ嬢ちゃんの持つスキルは、"硬化"――彼女の家じゃ役に立たないものだった。俺達は、種族特有の能力を持たないだろ? そのかわり、どんなスキルをアビゲイルから授かるかで人生が決まるところがあるんだよ」

 サージが語るには、リーゼの能力が気に入らなかった父親は、リーゼをこの地に放り出したそうだ。サージを護衛につけたのは、母親の機転であり、母親の依頼を受けてサージ達はここにとどまっているらしい。

「団長は、リーゼが心配」

 ジュースのグラスを両手で囲うようにしながら、リリンダが言った。
 リリンダは今年、十五歳になったという。人間ではだいたい十五、六で成人と認められる場合が多いそうだが、大人達の中に混ざっていても、リリンダは堂々としていた。

「そりゃ、心配だろ。スキル一つで父親に見捨てられたんだから」
「リーゼお嬢様は、リーゼお嬢様ですとも。私の忠誠心を捧げるのに、あれほどふさわしいお方はおられませんよ。あなただって、リーゼお嬢様に助けられた側でしょうに」

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