幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
「なあ、リーゼってどうしてこんなところに――こんなところって言っても、お前らに文句があるわけじゃねぇよ。この屋敷には気のいいやつばかり揃ってるのは、俺だってわかるさ」

 この屋敷に滞在するようになってからの期間は長いとは言えないが、この屋敷はムラトにとっても居心地がいい。
 食事はリリンダが中心になって作っているが、彼女の手伝いには常に二人、サージの部下達が交代でついている。
 この屋敷に住む皆が自分のできることで、リーゼを気遣っている光景は非常に美しいものだ。リーゼがそれを気負わず受け入れているのも、自分を気遣っている相手に感謝しているというのが伝わってくるのも。

「まだ、こんなにちっちゃくてさ。なのに、親がついてこないで、こんな辺鄙なところにひとりでいるって何かおかしいだろ。皆がリーゼのことを大事に思っているのはわかるが、血のつながった家族も親戚もここにはいないじゃないか」

 自分の肩くらいのところで手のひらを水平に動かし、リーゼの身長を示してみる。まだ、ムラトの方が大きいのだが、あと数年のうちに抜かれてしまうだろう。

「――あいつな」

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