幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
(大丈夫、私、誤解してないから)

 母が手を伸ばし、リーゼロッテの頭を撫でる。それから、フランチェスカの頭も撫でた。
 父の愛情はリーゼロッテに偏っていても、母の愛情は平等だ。
 リーゼロッテがフランチェスカを優先するよう父を誘導しているのを見抜いていて、フランチェスカが疎外感を覚えないよう、気を配るのも忘れない。だからこそ、公爵家はうまく回っているのだろう。
 神殿の前に馬車が停められる。最初に行くのは、フランチェスカを抱いた父だ。リーゼロッテは父のあとに続き、母が半歩遅れて歩く。

「ようこそ、おいでなさいました。今日は、お嬢様達がスキルを授かる日でございましたな」

 出迎えた神官は、儀式用の白と青のローブを身に付けている。
 腰に巻いた帯には、金の糸で刺繍がされていた。ローブの生地は上質のもので、公爵家の人々を迎えるのにふさわしい装いだ。
 神殿の奥、案内された祈りの間では、正面に若く美しい女性の像が立っていた。
 膝をついた彼女はその手に花冠を持ち、誰かの頭にかぶせようとしているかのように、両手を前に差し出していた。
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