幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 父が、フランチェスカをこれほど熱烈に抱きしめているのを見るのは初めてのことだった。今までフランチェスカは放置気味だったからこれでちょうどいいくらいだ。

「行ってきます」

 現金なものだな、と若干呆れた気持ちを抱きながら、リーゼロッテは女神像の前に進んだ。
 フランチェスカがしていたように女神の像の前で頭を垂れ、胸の前で両手を組み合わせて祈りを捧げる。どんなスキルが与えられても文句はなかった。

(女神様、私には、どんなスキルを与えてくださるのでしょう?)

 この世界で、できるだけたくさんの人を守ることができるそんなスキルだったらいい――公爵家の娘として生まれたのなら、たくさんの人を守る必要が出てくるだろう。
 そのたくさんの人の中にはもちろん父も母もフランチェスカも含まれている。
 いつまでもこの地で、大切な家族と一緒に暮らしていきたい。だから皆を守ることのできるスキルがいい。
『あなたは、たくさんの人を守りたいの?』

 突然、心の中にそんな声が聞こえてくる。

(そう。たくさんの人を守って、皆で幸せになりたい)

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