幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
(それって、フランチェスカにもあまりよくない気がするんだよね……)

 父の膝の上にいるフランチェスカも、空気が変わったことに馴染めていないようだ。必死に瞬きを繰り返しているのは、こぼれ落ちそうな涙を懸命にこらえているから。
 そして、ぬいぐるみの耳をしゃぶってなんとか気持ちを落ち着けようとしている。
 父の機嫌をこれ以上損ねてはならないと、フランチェスカなりに考えているのだろう。この場の空気を悪くしている原因は、フランチェスカにはないというのに。

「――とにかく、だ。この娘は処分しなければならん」
「あなた!」

 母の悲痛な叫びにかぶせるように、リーゼロッテは心の中で叫んだ。

(待って待って待って待って……処分って!)

 いったい何を考えているのだ。まさか自分に対して、処分なんて言葉が出てくるとは思ってもいなかった。

(いくらなんでもマズイでしょ!)

 逃げ出そうにも、今のリーゼロッテは五歳である。逃げたところで、五歳児が生き残る術はほとんどない。
 森の中に逃げ込んで魔物に食われるか、悪い大人に売り飛ばされるか。ろくな未来が待っていないことだけはたやすく想像できる。

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