幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
(手のひら返しにもほどがあるわ――!)

 屋敷には、多数の招待客がまだ待っているはずだ。リーゼロッテの授かったスキルがどのようなものなのか。皆、気になっているだろう。

「――いや、殺すのはまずいな」

 さすがの父も、いきなり殺すというのは思いとどまったらしい。ため息をつき、苛立たし気に前髪をかきあげる。

(授かったスキルで、お父様の評価がここまで変わるとは思ってなかった……)

 鋭いナイフで胸を突きさされたような痛みに襲われる。ここで涙を流しては、父の怒りをさらにあおることになりかねない。
 向かい側の席、父の膝にいるフランチェスカが大きな目を瞬かせて涙をこらえているのがよく見えるからより強くそう思う。
 きっと、今のリーゼロッテも、あんな顔をしているのだろう。

(……今度は、幸せになれると思ったのに)

 前世では、愛情なんて知らなかった。
 子供達を預かる養護施設では衣食住に困ることはなかったし、教育もきちんと与えてもらえたけれど、親のような愛情を施設の職員に求めるなんてできるはずもなかった。
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