幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 養子として引き取られることを望んでいたが、縁に恵まれないまま施設を出ることになって。
 就職した先でも、親しく付き合う人なんていなかった。
 仕事場と家を往復し、お金をためて大学に行くからと徹底した節約生活。
 休みの日だって外に出かけることはほとんどなかった。何度も繰り返し読むことのできる小説や漫画が、佳奈にとっては数少ない娯楽だった。
 たくさんの本を買うことはできないから、基本的には図書館を利用。
 週に一度書店に行って、店内をぐるぐると回り、厳選した本を一冊だけ買って帰るのがささやかな楽しみだった。
 それなのに、夢もかなえられないまま、若くして死亡。
 今回の人生では公爵令嬢。前世が不幸だった分、今回は幸せを与えられたのだとそう思っていた。前世の記憶があるのは、今の幸せをより強くかみしめるためだと。
 父も母も妹も、リーゼロッテを愛してくれた。娯楽だって、リーゼロッテが望む以上のものを与えられた。
 小さな馬に乗っての乗馬の稽古。近隣に住む子供達を招いてのパーティー。
 皆、"リーゼロッテ"のことを愛してくれていると思っていた。それが誤りだったと思い知らされる。

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