死神は花を狂おしい程愛してる
「どこ行くの?」
パチッと目を開けた、蒼士。

「花楓…俺から離れるなっつたよね?
何度言えばわかるの…!?」
鋭い蒼士の瞳が、花楓を捉えた。
「ごめんなさい……」
「うん…はい、おいで?」
ニコッと笑い、両手を広げる蒼士。

満面の笑みなのに鋭い蒼士の瞳と、先程見た背中の死神が、花楓を躊躇させていた。

「早く!花楓!抱き締めさせて!」
急かす、蒼士。
「蒼士さん」
「ん?何?」
「背中……」
「背中?」
「死神…」
「あー刺青?」
「うん…」
そう言うと蒼士は起き上がり、花楓に背中を向けた。

「━━━━!」
蒼士が裏の人間なのは、十分わかっていたはずだった。
でも現実を突きつけられたようで、花楓は怯えていた。
「怖い?」
花楓に向き直った蒼士が、顔を覗き込んだ。
「少し…」
「だよね…でもこれは、俺そのものだから…!」
そして、花楓の頭を撫でた。

「え……蒼士さん、死神なの?」
「そうだよ?
元々は親父がそう言われてたんだけど、今は俺が死神なの」
「どうして?」
「東園が裏の人間なのは、なんとなく知ってるでしょ?」
「えぇ…」
「裏ってことは、花楓が普段暮らしていて起こり得ない事が、俺達の世界では普通に起こるんだよ」
「それって…」
「うん…命のやり取りがね……!
だから親父は相手の“死”を、ある意味自由に操ってたからそう呼ばれてたんだよ。
そして、俺がそれを引き継いだって感じかな?」
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