志岐さんと夏目くん
むしろ、励まそうとして色々声をかけ続けたら、余計に傷つけてしまいそうだ。
私、言わなくてもいいことまで言っちゃいそうだし……。
それならいっそのこと、黙って歩いてた方がいいだろうな。
と思ったから、その後は黙ったまま歩くことにした。
それからしばらくは、お互いに無言だった。
私は沈黙の時間が嫌いじゃないから全然いいけど、夏目くんはどうなんだろう?
学校だと一人で居るのはあまり見たことがない。
常に誰かと一緒だし、どんな時も楽しそうに笑っている。
だから人と一緒に居るのが好きで、お喋りが好きなんだろうな。 というのが彼のイメージだ。
でも、今は無言。
あんなことがあったばかりだし、すぐにいつも通りの夏目くんになる……とは思ってないけど、さすがにこんなに静かだと心配になってしまう。
「……夏目くん、あのさっ」
と、結局 私の方から声をかけてみることにした。
話題も何も思いついていない状態だったけど……。