志岐さんと夏目くん
どんな顔で私を見てるのか、それを知ることの方が怖い。
だから私は、俯いたまま言葉を繋げていった。
「さっき、廊下で手を引っ張られて、夏目くんのすぐ隣に行った時……本当はすぐ離れなくちゃいけなかったのに、手を離したくなかったの。 そばに居たいって、思っちゃったの」
「……」
「ほんとはね、「一緒に回ろう」って誘ってくれた時も、凄く嬉しかったんだよ。 でも、自分の気持ちを知られてしまうのが怖かった。 怖くて怖くて堪らなかったの。 だから……断った」
あぁ、ダメだ。
ダメだって思ってるのに。
迷惑をかけるってわかってるのに。
それでも、言葉が……気持ちが、溢れ出していく。
「「彼女のフリ」をするまでは ただのクラスメイトだった。 だけど一緒に過ごして、一緒に笑い合って……夏目くんのことを色々と知って、変わったの」
自分の気持ちを隠し続けておくことは出来ない。
きっともうバレてる。
絶対にバレてる。
バレてるのなら、ちゃんと言おう。
彼の目を見て、ちゃんと自分の言葉で言おう。
そう思いながら顔を上げ……そのまま真っ直ぐに夏目くんを見つめた。