ノイズのなかで、彼を待って。
私は彼を待っていた。

行き交う人は皆、私の事なんて見えていないようだった。


そこは決して小さくは無い駅で、人通りも十分に多かったように思える。

2つある出口の外では、どちらから出ても、有名なカフェが大きく入口の扉を開けて、甘い匂いを漂わせていた。

私はその出口のどちらか一方の外で(というのは、私はまだその駅をよく知らなくって、適当に足を動かして外に出たからである)、どこの土地でも大抵見ることができるそのカフェの入口をじっと見つめていた。

スマートフォンを見ていなかったので、私がここに立ってどれくらい経ったか分からなかった。

ひと組の若いカップルが店の中に入り、それから私がやっとスマートフォンを見たのは、先程店に入った2人がテイクアウトをしたドリンクを持って外に出てきたのを見てからだった。
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