誰を?何を?見ているの?
16項

☆☆充実?


佐久間総合病院は、
内科、外科、整形外科、
産婦人科、小児科、心療内科があり
毎日慌ただしく過ごしている。

小児科は、
外来は二名体制。
病棟に二名。
四人の小児科の先生が勤務している。

大学病院に次ぐ
大きな病院である。

おじいちゃまは、
医療には携わってないが、
経営者として関わっている。

毎日、忙しいが
充実した毎日を送っていた。

とも子とランチしたり
凪ととも子と飲みに行ったり

私は実家には戻らずに
一人暮らしをしている。

一人で何も考えずにいる空間が
欲しいから······

「結婚したら一緒にいれないよ。」
と、ママは言うが
そもそも、結婚しないし····
出戻りだし·····

今日、とも子が帝王切開で助けた
双子ちゃんを診察に行く。
本当に小さくて
でも、一生懸命、呼吸をして
手足を動かしている
このまま、落ち着いてくれる事を願いながら
NICUで様子を見る。

そこへ
救急車からの受け入れの要請があり
事故の方が搬送されてくる事に·····


凪を始め·····
皆、手を尽くした·····

だが·····男の子だけ·····
助け····きれ····なかった·····


遥·····っ·····

私は·····無力だよね·····


沢山の未来を持っているのに
救ってあげることが·····
できなかった·······


中庭のベンチに
座りこむ

どの位、そうしていたのか·····


少し大きなカーディガンが
肩にのる
「また、風邪ひくぞ。」
その声に······振り返ると·····

······えっ······

········かお····る·····?·····

「こちらから、声をかけるのは
止めようと思っていたんだ。
だけど、もう一時間も
彩葉、そうしているし·····
心配になって。」
「薫。あなた····
なぜ、ここに?彼女は?
と、訊ねようと······
「あっ、風間さん。
ここに、いたのですか?」
と、綺麗な女性が現れて
「すみません。直ぐに戻ります。
先に行って下さい。」
と、伝える薫に
その女性は、一度私を見て
「佐久間先生ですよね?」
と、言われて
どなた?だったかな?と
思っていると薫が
「川埜事務長の娘さんです。
先週から事務補助に入られてます。」
と、言うから
「佐久間です。」
と、頭を下げると
「川埜です。
宜しくお願い致します。」
と、言い
「風間さん、いきましょう。」
と、薫の腕を引っ張って行く。

どう言うこと?
と、思っていると
「風邪ひかないように
それ着て中に直ぐ入れ。」
と、こちらを見て話す薫の顔は
一緒に暮らしていた時の様に
穏やかで優しい表情をしていた。

えっ、違う、違う!!
何で、薫が、ここに居るのよ!
< 56 / 85 >

この作品をシェア

pagetop