誰を?何を?見ているの?

☆☆どうなってるの?


「お父さん!!
いや、院長!!
どう言うことですか?」
「いきなり入ってきて!
どうしたんだ?なんの騒ぎだ?」
「あ~、ごめんなさい。
でも······あ~····もっ·····
薫よ!!か・ざ・ま・薫!
川埜事務長が一人で人事を
決めるわけないから。
知っていたんだよね?」
「ああっ、薫君の事?
知っていたよ。
彩葉、知らなかったのか?
今まで。」
「知らない。
えっ、今までって?」
「彼は、佐久間に勤務して
もう、三ヶ月過ぎてる。」
「うそ?そんなに?知らない。まったく。」
「百合や凪も知ってる。
   とも子ちゃんもかな?」
「えっ、ママも?凪は、どうして?」
「凪が、竹田のMRから頼まれたらしい。
まあ、薫君とは思ってなかった
みたいだが。
百合は、面接した日に
薫君と会った。」
「········皆して····黙ってたの?」
「う~ん。少し違うかな?
俺達は、進んで協力はしない。
と、薫君には、伝えてある
薫君自身が決める事だから。
ただ、彼からは、面接の時
彩葉のそばにいたい。
と、それだけは言われた。」
「薫は、なぜ、医療事務を?」
「風間建設を失脚した時
兄の哲君は、海外に行き
建築の勉強をやり直す事に
したみたいだけど
薫君は、色々、悩み考えて
自分は、建築に携わっては行けないと
それが自分の贖罪と決めて
そして自らの未来の為に
医療に少しでも関わりたいと
医療事務の資格をとり
経験をつみ
色々なMRから情報を貰う中
竹田製薬のMRから
佐久間の事務長の話を聞いたらしい。
自分は、医師になることは出来ないが
少しでも患者さんの役に立ちたい
そして、彩葉のそばにいたいと。
遥に、敵わなくても
自分なりの方法で彩葉と
一緒に生きて行きたいとさ。
百合が
薫君じゃない人と幸せになるかも
しれない彩葉を見ていれるのか
と、訊ねたら
自分が幸せにしたい
と、言っていたよ。」
と、言われて
「······ばっか····じゃない···の····
建築の仕事が····好きな····くせに·····」
「彩葉。私は····お父さんは、
彩葉に幸せになって貰いたい
彩葉に、毎日幸せそうに笑っていて
欲しいんだよ。
その相手は、薫君でも···誰であっても
良いんだ。
ただ、ただ···可愛い可愛い娘の
幸せを願ってるだけだ。」
「いや~。院長。
そこは、私を推して下さいよ。」
「あはは、やはりきたか。」
「·····かお···る····?」
「ノックしました···よ····
返事は、ありませんでしたが···
入らせて頂きました。
申し訳ありません。
きっと、彩葉の事だから
院長に会いに行くと思いまして。」
「見抜かれているよ。彩葉。」
「······薫····あなた····
····ばか····だわ·····っ·····」
「俺は、俺の未来の為に
勉強をして実績を積んだだけ。
そして、俺が幸せになるために
欠かせない
俺の愛する人に
俺の存在を知って貰い
俺自身を受け入れて貰いたい
その為だけに頑張ってきたんだ。
彩葉、あの時の別れを
どれだけ、悔やんだか
どれだけ、自分自身を呪ったか····
もう、間違うことも
失う事も嫌なんだ。
君を····彩葉を····
愛している。
もう一度、俺自身を見て貰えない
だろうか?」
と、真剣な眼差しで伝えてくる
薫に····
私は、なんと答えたら良いのか
わからずに····涙が溢れ····
「····ば···かっ·····かお···るの···
  ·····ばか·····っ····」
薫は、困った顔をしながら
私の涙を拭いてくれながら
そっと、私を抱き締めてくれた。
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